朽ちた鍵が合う扉 狂った旋律
矛盾がない人間なんていない。
誰もが矛盾の中を、生きている。
分かっていながらも、そうして生きる。

矛盾のままで手に入れる結果を、お前は受け入れるのか?
それで本当にお前は救われる?

それではいつまでも変わらない。
だから俺は捨てる。
甘さも優しさも。
世界はいつだって残酷に仕組まれていて、俺たちを試す。
生きる価値があるのか。
どうして生きなければならないのか。
生きる理由は何か。
誰よりもその意思は、強いのか。
生きなければならない理由と存在意義を、与えられた。
しかし彼は違っていた。
死ななければ救われないような命を抱えて、足掻いている。

だからお前はそこにいちゃいけないんだ。

矛盾を抱えたままで罪に苛まれたままで生きていて、死を望んでしまっているお前があるべき姿じゃない。
誰よりも強くありながら、誰よりも優しくあろうとして保守を捨てて得られる生きがい。
お前が与えているのは優しさなんかじゃない。
ただの自己満足なだけで、他人を労わるのではなくてそれこそ保守ではないか。
そうすることによってもたらされる安堵に隠れる。
必要とされていると錯覚し、自分がやらなければ守らなければ何も変わらないと。
その反対では、自分の命を顧みない頑な強さ。

けど彼にはそれがもう無意識に巣食っているのだ。
だから気が付かない。
それとも、気付いてしまえば壊れてしまいそうだからフリをしているのか。

許されることを強く望み、だけどそれがどうすれば与えられるのか知らない。
本当に必要とされている場所を、知らなかった今までは。
しかし今、彼は彼が求めた必要とした場所を見つけてしまった。
それが己の傍ではないことに、今更気が付いて憤怒して悲しくなった。

本当にお前を許して愛してくれるのは、そこにいるのか?

いないはずだ。だからそこにいてはいけない。

「お前の大罪も、死にたがる命の傲慢さも空の優しさもすべて許し愛してあげられるのは、俺だけだろう?なぁ、スザク……」

欲しいならば何でも与える。
愛も欲も何もかも。
いつでも囁いてやろう。愛してやろう、許してやろう。

「好きだよスザク、スザクだけだ」

いくらでも、好きだと言おう。
俺にはお前に与えられるだけの愛がある。

スザク、スザク、スザク。
お前は与えられる愛の中で、生きていけばいいんだ。

なぁ、スザク。
だからお前はそこにいるべき人間ではないんだ。
俺の手を取れば、それで全て終わるんだよ。

「なのに、どうしてお前は俺を選ばなかったんだろうな……」


寂しいのは彼ではなくて、俺なんだろう。
本当に救われたいのは、きっとー。


ルルーシュ。


目蓋の裏にある姿が、ふっと口元を緩ませて笑ってそう呼んだ。
どことなく悲哀を孕ませて、優しくー。


そしてルルーシュも哂う。
選ばないのなら、選択肢を削ぎ落としていて選ばせよう。
もう、俺しか残らないように。