翌日、スザクはルルーシュに今日の夜の予定がなくなったと伝えると、「そうか」といつものクールな表情を崩すことなかったが安堵はしたていたようだった。
その後すぐに始業の鐘が鳴ってしまい、続きを話すことは出来なくてその後も何かとタイミングが合わなかったり言い逃したりと、スザクはなかなかルルーシュに昨日のことを詫びることが出来ずにそのまま一日は流れあっという間に陽が暮れる。
歓迎会と表したパーティーは部活も終わり、静まり返った後のクラブハウスで生徒会メンバーが集まる、という形だった。
しかしスザクは教室に残っていてくれ、と言われており一人暇なので復習をしていた。
特別扱いで今夜の主役、という待遇なようで少し照れるし、恥ずかしくもあった。
幼少の頃は、誰もが「誕生日おめでとう」と大きなケーキにプレゼント。プレゼントなんて、欲しいと思っていたものだけじゃなくて望んでないものまで大人たちは用意してくれた記憶がある。
今だとおかしなものだと、苦笑する。
すると、コンコン、と扉を叩く音がしてスザクは視線をそちらに向けた。
「準備が出来たから呼んで来い、だって」
ルルーシュが扉の柱にもたれるようにして立っており、スザクを手招きする。
「わざわざ君が出迎えてくれるなんて、感激だな」
「別にそうは思ってない、て風に聞こえるぞ」
「そう?」
クスクスと喉を鳴らして、スザクはルルーシュと並ぶと歩き出す。
薄暗くなった学園の廊下を渡り、唯一煌々と明かりがついているルルーシュたちの館へ向かう中、スザクはようやく口にする。
「ルルーシュ、昨日はごめん」
「?何のことだ」
ルルーシュにはどうして彼が今謝っているのかが分からなかった。
「今日のこと、断ったこと。軍人だから優先事項が決まっちゃうんだ、なんて言って。だからって君のこと、軽くみてるわけじゃないんだ。僕の、誕生日だったから、だろ?」
その言葉を聞いて、ふいにピタリとルルーシュの足が止まる。
もうクラブハウスは目と鼻の先だ。
「ルルーシュ?」とスザクが小首を傾げれば、彼が不満そうに振り返ってきた。
「お前は本当に、空気が読めない奴だな……」
「?」
「驚かせようとしたのに、お前が最初からそんなことを言ったら少しはがっかりするだろ俺が!だからこの扉を開けるまで分かっててもそういうことは言うな」
はあ、と呆れた吐息。
これが誕生日を祝うもの、だと勘付いていたとしても口にしてはせっかくの空気の流れがピタリ、と止まってしまうもの。
それにわざわざ歓迎会、とカモフラージュまでしているのだから。
また、それを今ここで二人きりでいる内に言われると気恥ずかしかった。
人が故意な隠している気持ちをさらり、と答えてしまう。それが少し、憎らしい。
「ごめん、」
「まぁいいけどな。分かっているんなら話は早いだけだ」
今更スザクの発言に天然色が混ざっていることをとやかく言っても仕方のないことだ。それがスザクの良いところなんだと言ってしまえばいい。
ルルーシュは自分の家でもあるハウスの扉のノブに手を掛けて回す。
すぐに視界は薄闇から白い光りに包まれて、パパンと大きなクラッカー音が耳を刺激した。
さらにそれに一瞬驚くが、そのあとまたすぐに続けて大きな音というかたくさんの声に包まれる。
揃ったその声たちは張り切ってこう告げる。
「ハッピーバースディ!!!枢木スザク!!!!」
もう一度クラッカーの音がして、スザクは全身を色とりどりな紙紐を浴びことになった。
スザクの後ろではルルーシュがそれを楽しげに傍観している。
扉を開けた途端にこんな事態が待っているとは思わずスザクは硬直したままだったが、丸くまった瞳の先に映る光景に、胸が急に熱くなった。
「びっくりした?びっくりしたでしょ?」
ミレイが胸を張ってこの企画成功を喜んでいる。
「お前、今日が誕生日だって言わないから慌てたんだぜー?」
リヴァルは水臭いぜ、とスザクの肩を叩いてホールの真ん中へと連れ出す。
「そうそう。私がスザクくんに書かせたプロフィールを見ていて、気付いたってわけ!」
「たまに役に立つんですよね、会長の趣味」
彼女の傍らにはケーキを持ってきたシャリーがいる。その後ろにはカレンもいて、もちろんナナリーの姿もあった。
自分の周りの人が全員笑顔で迎えてくれている。祝ってくれている。
ぽかんとしていたスザクもやっと現実に引き戻されたかのように表情が緩くなって、それぞれの顔を見渡した。
自分の誕生日を祝ってくれるんだ、ということが頭の中では分かっていてもこうして目で、耳で肌でも感じると自然と真っ白なままで受け止めることが出来た。
「みんな、ほんと、ありがとう……」
こういうのを感無量、て言うんだろう。
そのままスザクは気持ちが溢れてきて、目頭までも熱くなった。
いくら言葉にしても胸にある気持ちを表現できないのが悔しい、と思う。
「ありがとう、僕なんて言ったらいいのか……」
「泣くなよスザク!今夜の主役が今から泣いてちゃあー始まらないぜ!」
リヴァルに背中を押されて目の前に現れたのは、ホールケーキ。ちゃんと蝋燭も17本立っていて、プレートのところにも自分の名前が記されている。
カレンが部屋の電気を消せば、蝋燭だけの明かりになりミレイたちが誕生日の歌を歌い始めた。
遠い昔に聞いたような気がする懐かしさ。くるりと視線を暗い中で見渡すとナナリーの傍でルルーシュも小さくだったが歌ってくれていた。
歌が歌い終わると、スザクは促されてケーキの蝋燭を吹き消すと、またハッピーバスディ!!と盛大な声に囲まれて部屋が明るくなった。
するとミレイがシャンパンのコルクを抜いて、「今日は無礼講よ無礼講!」と告げてここからはもう勝手にパーティーを始めてしまう。それにどうやら飲み物はシャンパンだけではなくて、アルコールの入ったものもあった。
「スザク、おめでとう」
さっきまで離れて眺めていたルルーシュだったが、彼の隣に来ると直接その言葉を伝えた。
そして持っていたシャンパンを手渡す。
「ありがとう、ルルーシュ」
今でも思う。
またこうして、成長した自分たちが並んでいられることが夢みたいだと。
そしてまさか誕生日を祝ってくれる彼がいることも。
「ずっと軍にいたし、誕生日なんていうけどただ生まれた日というだけで特別だとはあまり思ってなかったんだ」
スザクはそのまま場所を隅の方に外して騒いでいる彼らを遠めで見ている。もちろんその隣にはルルーシュがぽつりぽつりと零す言葉に耳を傾けていた。
実際そうだろう。ルルーシュにとっても誕生日だから特別に思ってもらいたい、という子供心はもうない。
ましてや軍人になっているスザクにとっては、自分より誕生日なんて祝う暇も思う暇もないんだろう。
「けど、こういうのも悪くないな」
周りに人がいて、笑っていて。
もう無縁だと思っていたスザクにとっては異空間とも感じれたけれど、懐かしくもあって心地良い場所だとも思えた。
素直に嬉しくて、心が躍る。
「当たり前だ。お前もちゃんと楽しめよ、主役はスザクなんだから」
ぽん、と肩を叩かれてワインレッドの瞳が優しく笑い掛ける。
するとリヴァルたちがスザクとルルーシュの二人を呼ぶ。
今日は一日このままここで、彼らと過ごそう。
それがスザクにとっての一番の時間であり、一番のプレゼントだった。
しかし事態は数時間に変化を遂げる。
時間も遅くなってきており、ルルーシュは先にナナリーを部屋に帰すことにしてホールを後にして帰ってこれば、雰囲気が妙なものになっていた。
今回用意したシャンパンにアルコールは入っていなかったものの、ナナリーもいなくなり時間帯も深夜に押し迫ってきた頃になってミレイがここからが本番よ、と言い出し何本かのボトルをテーブルの上に登場させる。
それが何かと聞けば、ワインだと言う。
シャーリーはそんなものもってこないでください、と怒鳴りカレンもさすがにそれはと思ったのか首を振る。
だがリヴァルはノリ気で、いいじゃんいいじゃんたまにはさ、とミレイに賛同。
肝心のスザクはというと、彼も賛同出来ないという顔をしていた。
そんなところにルルーシュが戻ってきて、彼もスザク同様に「いい加減にしてくださいよ」と、呆れる。
「そんなに堅く規律守らなくても人間生きていけるもんよ!」
「そういう問題じゃないですよ!」
「ほーらほら、そんなにアルコール度だって高いわけじゃないんだし、ちょっとぐらいハメはずしてもいいんじゃない?スザクくんだってたまにの休日なんだから楽しまないと損よ損!こんな時間滅多にないんだから!」
と、ミレイはごり押しを通しグラスに注いだワインをスザクへと突き出す。
渡されたスザクは困ったようにグラスの中で揺れる白い液体を見下ろした。
ミレイは構わずぐっ、と飲み干してしまい続いてリヴァルも調子に乗ってワインを口にする。
ワインというより果実酒に近いものでまるでジュースみたいだ、と彼らに勧めた。
ジュースみたいだからと言って馬鹿の一つ覚えに飲めば痛い目に遭う、ということがわかっていないことにに溜息。
「スザク、相手にする必要はないぞ」
「とか言ってルルーシュ実は飲みたいんでみたいじゃないの?」
リヴァルは上機嫌でルルーシュにそう言いながら絡むと、むきになって「違う」と、唇を曲げる。
「まさかーお酒の味、知らないとか?まだまだ子供ねぇ」
そう今度はミレイが冗談まじりに言えば、さらにむきになったルルーシュが眉を吊り上げた。
それを心配そうに眺めているのはスザクとシャーリー。
このままじゃあ、ルルーシュはミレイにハメられるだろうな、と。
そうして数時間後には、収集の付かない事態となる。
結局、ミレイの挑発によりどれだけで潰れるか、というゲームを始めてしまった。
もちろんメンバーは強制参加のために嫌がおうでもスザクたちも参加である。もし、断れば生徒会長として罰ゲームを課す、なんて宣言をされたらNOとは言えない。
ミレイのことだ。とんでもないことを言い出すんだろうな、ということが分かるためここは大人しく従っておくのが正解だろう。
ある意味、彼女も絶対厳守な力を持っているのかもしれないようだ。
それにスザクはアルコールに弱い、ということではなかった。
飲んだことはがない、というわけでもなくて飲める、というわけでもなかったが味は知っている。
だから大丈夫だ、と自分に関してのことは心配なかった。どこまでがセーフでアウトなのか、把握しているつもりである。
が、問題はルルーシュの方にあった。
ワインのボトルが2本空になったところで、かなりメンバー全員が酔っている様子ではあったが格別様子がおかしくなっていたのは彼、ルルーシュ。
スザクの予想としてはルルーシュは強い方だろうと思っていたがどうやら誰よりも弱いらしく顔も赤ければ、目蓋も半分下りているようだ。口数も少なくなってきているし、このまま寝てしまう気がした。
「ルルーシュ、大丈夫?」
「何が、」
心配そうに声を掛ければ呂律の回らない声が返ってくる。
これはもう無理そうだな、と思ってスザクはルルーシュの肩に手を回して椅子から立ち上がらせて、「もうルルーシュは無理そうなので部屋に連れてきます」と、ミレイに言う。
彼女たちも相当酔いはきている様子で、「いってらっしゃい」と言うがわかっているのかあやしい。
ともかくスザクはルルーシュを部屋に連れていくことを先決とした。
スザク自身も完全に素面というわけでもないため、足元は少し覚束ない。
「スザク……?」
「もうルルーシュはやめた方がいいよ。君、すごい酔ってる」
「……酔ってない」
「はいはい、」
微妙に成り立たない会話をしながら、彼の部屋に到着するとすぐにベッドへと彼を寝かせた。
綺麗に整頓された部屋で勝手に入ったことがバレたら怒られるかな、と苦笑する。
ベランダの窓から見下ろしてくる月明かりが、綺麗だった。
(少し僕も酔ったかな……)
今戻るとまたゲーム参加しなければならないと思うともうしばらくこのままここに留まっていようかな、とスザクは思い大きく息を吐いてルルーシュの傍らに腰を下ろした。
「ルルーシュ、大丈夫?」
無理をするからだよ、とスザクは言って彼の顔を覗き込む。
水を持ってきた方がいいかもしれないな、と思い立ち上がろうとした瞬間、ルルーシュに腕を強く掴まれてシーツの中へと体が沈んだ。
ふわり、と髪の毛が舞って、突然視界が天井へと移り変わって驚き起き上がろうとしたがそれを今度はルルーシュの顔で視界が塞がれる。
薄暗い上に前髪で表情が隠れてしまっていて、読めない。
「ルルーシュ?」
翡翠の双眸が無垢に彼を見つめる。
「……スザク、」
すっ、とルルーシュの手のひらが頬を撫で首筋へと下りる。
途中から熱くなって制服の上着は二人とも脱いでおり、シャツ一枚だった。
ひくり、と彼の触れられることによって身体が微かに震えた。
ここでストップをかけなければこのまま流されてはだめだと思い、ルルーシュに声を掛ける。
「ルルーシュ、退いて欲しいんだけど」
「どうして?」
ふ、と息が耳へと掛けられる。
それはとても甘い声で、誘われていた。
心臓が跳ね上がる。
「どうして、て言われてもだめなものは、だめだ」
「別にいいだろう?初心な関係じゃないんだ」
ちらり、と見えたルルーシュの瞳。
潤みがあって、淑やかな色気があった。
酔っているというのもあったけれど、それ以上にその眼の憂いにスザクが酔いそうになる。
そうだ。彼は酔っているから何の前フリもなく自分を押し倒しているのだと思考を正しい方向へと修正しようとした。
彼の手はスザクの両腕をしっかりと捕え、唇を肌へと寄せる。
吐息の温かさを感じて目を閉じた。
「ルルーシュ、悪ふざけは……ッ」
「ふざけてない」
「君、相当酔ってるだろ」
「酔ってない」
ルルーシュはスザクの身体の上に馬乗りになると、ゆっくりと顔を近づける。
上気した頬は酒のせいなのかそれともー。
「本当に、だめだルルーシュ。まだ……下には会長さんたちが、」
「俺は気にしてない」
ルルーシュの手が、胸を撫で下ろして下肢へと触れてきてスザクは言葉を詰まらせる。
この睦事が下の階層まで伝わるというわけではないが、もし誰かが帰ってこないことを気にして呼びにでも来たらこの状況をどう説明すればいいのか分からない。
ルルーシュに押し倒されてあまつさえ、股間を弄られている。
冗談が通じればいいが、シャーリー当たりは通じそうにないかも、と過ぎった。
「気にして欲しいん、っー!」
気にして欲しい、と唇を尖らせて抗議するがそれはルルーシュの熱くなった唇によって塞がれた。
優しい触れ合うキスではなくて噛み付いて、すぐに舌を忍ばせて口腔を這ってスザクの怯える舌を追いかける。
一度離れても息を吸い込む暇はなくて、角度を変えては夢中になって口付けられた。
流されないようにしようと思っていたのに情けないが、情熱的なキスに身体の緊張は少しずつ解れてしまう。自分のものではないざらついた感触に口の中を犯かされて眩暈がする。
ルルーシュは最後に下唇を柔らかく食んで、やっとのことでスザクの唇は解放された。
整わない呼吸の中で、見下ろす彼がにやりと笑う。
「お前、アルコールくさいな……」
また口端にキスに落としながら囁く。
「それは、君じゃないか」
はぁ、と大きな吐息を零してスザクは艶やかな碧色を宿した瞳で仰ぐ。
「それに、熱い」
「それも全部、君だ……っ」
「そうか?お互い様、だろう?スザク」
軽く撫でるだけだったルルーシュの手のひらが今度は意識を自覚を持って膨らむ箇所を擦り始め、スザクの身体はまた硬直する。
布越しに触られているだけだというのに自分でもはっきりと分かるほどに、感じていた。
「っ、あ、く……」
喉から零れそうになる声を、噛み殺す。
ルルーシュは苦しそうに眉根を寄せているスザクを見下ろして満足げに笑っている。
意地が悪い、とスザクは頬を朱に染めた。
誰のせいでこんなことになっているのか、彼は分かっているのだろうか。
スザクが身動きすればシーツが乱れて衣擦れの音。普段では気にならない音が、気になってしまう。
ジィ、とズボンのチャックが開く音もした。そうして伸ばされた手は、昂っている熱を包み込む。
その直接の感覚は気持ち悪いのと同時に、気持ちよかった。
触られているだけなのに全身が麻痺していくように。
「ル、ルーシュ、ん」
酔いが回っているせいか、いつも以上に身体は熱くなっていく。
心臓が爆音を鳴らしていてうるさい。
彼の手の中も温かくて、扱かれるたびに堅さを増して先端を親指で弄られれば透明な液が薄らと零れる。
なんて醜態だろうと思いながらも止められない。
「あ、っう、んぅ……もう、離して、だめだっ」
開脚されられた脚の間でルルーシュの指によって刺激を与えられ続けている雄は震えていて、あともう少し強い刺激を加えてしまえばすぐにでも達してしまいそうだった。
吐き出したしまえば楽になれるのだが、今だに理性が本能を上回っており素直になれない。だから離して欲しかった。
「スザク、出したいんだろ?ホラ、」
「う、あッ……!」
ルルーシュが容赦なく先端を指の腹で抉れば、スザクは促されるままに吐精した。
その瞬間は目蓋の裏に小さな花火が爆ぜたような明かりを見て、白濁した液が彼の手のひらに飛び散ってシャツまで汚す。
達してしまった衝動に、呆然とすればルルーシュが頬にキスをした。
優しく名前を呼ばれて身体も胸も震える。
「ん、はぁ……あ、」
もう彼が酔っているかどうかなんて確かめようもなければ、自分も相当酔っているのかもしれないと熱い息をルルーシュの首元へと噴き掛けた。
「う、ん……ぁ」
ぴくん、とスザクの身体が戦慄く。
ルルーシュが自分の腕の中でぐったりしている彼の両足を押し広げて、未だ堅く窄みになっている場所へと指を這わせたのだ。
きつく閉じられているそこは簡単に侵入できなくて、入り口をぐるりとなぞり浅く指を出し入れする。
その指先にさきほどスザク自身が出した蜜を塗って。
身体を繋ぐ、という行為は嫌いじゃないけれどいつまで経っても慣れることはない。
それでもルルーシュだから、許している。
キスをするもの、触れ合うことも。
本当に、熱くなっているのはお互い様だった。
じれったかった指先が、ぐっと中まで押し入ってくるとスザクは喉から引き攣った声を洩らすようになる。
狭い襞の間を引き伸ばしてスザクが一番敏感になる場所を引っ掻けば、押し殺すことの出来ない嬌声が部屋に響く。
それに驚いたスザクは慌てて手のひらで口を塞ぐが、それでも指の間から零れ啼く。
「や、だッ、そこ……は、いやだ」
甘くて痛い。
脳髄まで痺れるような、強い官能。
苦しいのかそれとも気持ちよいのか。
快感と苦痛が同時に伝わって、思考の箱にはもう何も入っていない。
「いや、だ、そんなに、あ……」
中に蠢く指を増やされてばらばら動かれたと思えば、また執拗に敏感な襞を擦られる。
泣きながらスザクは首を振って「いやだ」と告げるがルルーシュがそれをやめることはない。
「いやだ?嘘つきだな、スザク。いつも気持ち良さそうにしているじゃないか、今だって」
「ちが、う。あ、ほん、とうに…おかしく、なりそうッ」
喘ぐ唇はぱくぱくと、魚のように千切り千切りの言葉を紡ぐ。
内側から与えられる快感に、またも緩く勃ち上がるスザクの茎を見て、ようやくルルーシュは指を引き抜いた。
急になくなった圧迫に、スザクは詰めていて息を吐く。
虚ろになった視線を巡らせてルルーシュを見つけると、彼は目を細め愛しそうにスザクに口付ける。
蕩けた視線が彷徨って、出会う。
「スザク。お前に会えて本当に良かったと思ってる、お前が生まれてきた今日に、感謝してる」
君に恋するために、この魂はここにいる。
今だけなら、それだけのためだと言ってもいいだろうか。
母のことも妹のことも、復讐すらも忘れて今だけは夢中になっても、許してもらえるだろうか。
「ルルーシュ……」
汗ばんだ手が優しくルルーシュの頬を撫でる。
見つめる双眸も泣きながら微笑んでいて扇情的だった。
「君にそう言ってもらえるだけで、本当に嬉しいよ」
「スザク、」
愛してるよ、と唇が綴りたそうに緩む。
そうしてルルーシュはスザクの膝裏を抱え持つと腰を掴み、濡れ解した秘処へと雄をゆっくりと埋める。
指とは比較にならない熱の質量に声なく喘ぐ。
「う、く……」
ルルーシュもきつそうに唇を噛み、スザクの奥へ奥へと楔を沈めた。
臓器が押し上げられるような窮屈で異物の感覚。
少しでも動けばスザクの身体が震えて一つになっていることを全身の隅々まで伝えていた。触れ合った全ての場所から熱は飛び火していく。
どこにももう触れた箇所がないように。
熱い。熱くて、もうどちらの熱なのか、分からない。
「ふ、ぁ……んん、」
瞳から零れる涙が頬を伝ってシーツを濡らす。
「動くぞ」、とルルーシュが切羽詰った声で呟けばそれに頷く。
襞の間を彼の熱が何度も同じリズムで擦れていく。
痛さはあったけれど、それは次第に快楽だけを求めるものとなっていくのが不思議だった。
卑猥な音が繋がった部分から聞こえて、それに互いの乱れる呼吸が重なる。
一定の律動を続けていたものが、緩急をつけて腰を揺すられると、スザクは声を裏返しにしながら喘いだ。
貫かれれば飛びそうになる意識。ぎりぎりまで引き抜かれると戻ってくる羞恥。
ぎゅっ、とルルーシュの背中を掻き抱いてスザクはもっと強く、と求めるようになる。
「ルル、シュ、……は、ぁ、もぅ、」
強く貫かれて、また緩く抉る。最奥に感じるルルーシュの熱をもっと感じたくてスザク自身の腰も押し付けていた。
壊れてしまうそうだと、身体も悲鳴を上げているようだ。
「ん、あ、あぁ……!」
指でも感じていた箇所を執拗に突いてやれば、スザクは背中を撓らせて簡単に再度、射精した。
その衝動で内部も締め付けられてルルーシュも最後に彼の奥へと突く。
止めることの出来ない欲情に逆らうことなく、中へと自分の熱情を奔流させて広がっていく灼熱のような熱情に、焼け爛れてしまったような錯覚を引き起こす。
そうしてすぐに訪れる疲労感にスザクの上へとルルーシュも崩れる。
スザクの中は今だに脈打っていて、温かくて目を閉じればすぐにでも眠気に誘われそうになるほどに心地良かった。
背中に感じるスザクの手のひらの温度も。
すると、その腕がぎゅっと身体を抱き締めてきてことに目を開ければ、
「……やっぱり今日の君は、すっごい酔ってる」
スザクはとても恥ずかしそうにぽつりとそう呟いて、ルルーシュはその言葉にくすりと笑って「さぁな」とだけ、答えた。
最高の誕生日なのか、最悪なのか。
スザクはその答えを今夜中には出せそうになかったが翌朝になり、はっきりとする。
************************************************************************
「スザクくん、昨日は楽しんできたのかしら?」
「はい。おかげさまでたぶん……」
「?たぶん、て?」
「え、あ、いいえ!ちょっと色々と大変だったので」
「?」
「セシルさん、恋って難しいものですね」
翌日の朝。
ルルーシュとスザクはそのまま寝ていってしまっていたのだが、先に起きたルルーシュが発した言葉は「なんでスザクがここにいるんだ」と素っ頓狂な声を上げていたこと。
それが全てを物語っており、そしてしばらくスザクはルルーシュと口を聞くことはなかった。
またルルーシュはその日、ひどい頭痛に悩まされ左頬は真っ赤に腫れてしまったため授業は休んだらしい。
「やっぱり、最悪な誕生日だな。かつてないぐらいに、最悪だ」
←
君に恋する為に生まれた魂 U