お疲れ様でしたー、と一声掛けてから揃って会場を出た。
「豪華な打ち上げだったね」
と、小さな欠伸をしながらスザクは隣のリヴァルへと声を掛ける。
「豪華っていうか、ハメはずしすぎっていうかー。まぁそれが会長らしいんだけどねぇ」
そう思い出し笑いをしながら大きな欠伸をした。
昨日から一泊箱根旅行と題して学園祭打ち上げ旅行に来ている生徒会の面々。生徒会だけではなく、各委員会の生徒たちも交えてきているため大所帯だ。
それが鶴の一声で出来てしまうミレイには呆れる、というより尊敬のまなざしだ。
現在の時間、朝の4時近く。
リヴァルがもう一度また大きな口を開ける。
スザクとリヴァルは明日、というより今日の予定があるため皆より早くに宴会会場を後にしたのだ。さすがにこの時間までまた騒いでいられる生徒たちはツワモノだね、とスザクが苦笑する。
「ルルーシュはもう部屋かな?」
「あー、確かそんなこと言ってたような・・・」
同室であるルルーシュは彼らよりも先に会場を出ていた。ミレイに見つかるとうるさいから、と言って二人だけに告げてこっそり抜け出していたことを思い出す。
カードキーで扉を開けると、案の定部屋は薄闇でベッドサイドの電気ランプだけが淡く辺りを照らしている。
「ルルーシュ〜?寝てる〜?」
リヴァルが小声で呼ぶが返事はない。と、いうことはもう寝てしまっているということらしい。
ならば起こさないように、と二人は足音を立てないように寝室へと入ると目の前にある白い物体に目を奪われた。
いや、物体というかルルーシュに。
右のベッドにこんもりと盛り上がったブランケットの中に彼はいたが、その様子に目を合わせる二人。
「・・・・・・ルルーシュ、ていつもこんな寝相なの?」
ひそひそとスザクがリヴァルに耳打ちする。
「いんやぁ・・・それに俺、ルルーシュの寝相って実は初めて見るし」
性格上、何事にも計算高くてだらしないというイメージがないルルーシュに対しての予想だと、寝たらそのままの格好で身動きもしない、と思っていたが残念ながら現実とは違うというもの。
ブランケットに包まっている、というより捩れている。
ルルーシュの身体を一度巻いており、その上でちゃんと被って丸くなっているのだ。
まるでソフトクリーム?
どちらとなく、そう頭の中では一致した想像だった。
白く捩れて、柔らかいものがすぐに浮かびそうなほどの奇怪な寝相だった。どうすればそうなるのか。
「しかし、まさかあのルルーシュ・ランペルージくんがこんな寝相をするとはねぇ〜」
「苦しくないのかな?」
くすくすと笑いを堪えたリヴァルと同様にスザクも思わず笑ってしまった。
顔を覗き込めば、ルルーシュは眉根を寄せて苦悶の表情で寝ている。別にそんなに寒いわけでもないのに首元まで被っている。しかし本人は熟睡中のようだ。
寝ているときまでそんな難しそうな顔しているなんて、何をそんなに思いつめているのだろうかとスザクはどうでもよいことに疑問を投げかけた。
「そうだ、せっかくだから写メしておこうぜ!」
そういうとリヴァルはポケットの中から携帯を取り出す。
「勝手にそんなことすると彼、怒るんじゃない?」
「別に減るもんじゃないし、いいっていいって」
「そうだけど、こっ酷く怒られると思うよ、僕は」
そういいながらも滅多に見れないだろうルルーシュの一面に、スザクは本気で注意するのではなく悪戯心で告げるだけで楽しそうだった。
リヴァルが自分の携帯をカメラモードに切り替えると、突然彼の携帯が震える。
「あ、会長からだ」
タイミングがいいのか悪いのか、着信画面に表示された名前はミレイ。ルルーシュの寝顔も大切だがミレイからの電話の方が最優先ということで、リヴァルは通話ボタンを押すと部屋を慌てて出て行く。
1人取り残れたスザクはルルーシュの傍らに腰を落して、
「お疲れ様、ルルーシュ」
と、聞こえていなくても囁いた。
学園祭の指揮はほとんどルルーシュがとっていたため、他のメンバーより疲れていたから先に部屋に戻ったんだろうと労うように微笑む。
自分も早く寝てしまわないと明日に差し支える、とリヴァルを待たずしてエキストラベッドに足を向けようと立ち上がった途端、ルルーシュが小さく呻く声が聞こえた。
起こしちゃったかな?と、思い「ルルーシュ?」と声を掛けても返ってくるのはすーすーという気持ち良さそうな寝息だけ。
しかし、まだ唇は微かにぱくぱくと動いている。
スザクはもう一度膝を折ると、彼の口元に耳を近づける。
「ス、・・・」
「ス?」
ス、という言葉に続く声はかすれてしまって聞こえなかった。
「寝言?」
スしか聞けなかったことに首を傾げて、もう一度顔を見つめるとその顔がさきほどの苦しそうなものから変わっており、口元が薄く緩んでいる。
スザクからしてみればその無意識である笑みが、不気味に見えた。
「・・・スザク、」
「僕?」
自分の名前が彼の口から洩れたことに目を丸める。目蓋は閉じているし、夢の中では自分でも登場しているのかな?と暢気なことを思っていれば突如ブランケットの中から腕が伸びてきてスザクの腕を掴む。
「へっ?」
寝ている人からの突拍子もない行動に、素っ頓狂に声を上げてルルーシュを凝視すれば、目蓋を閉じたままの彼は唾が飛ぶ勢いでスザクに叫ぶ。
「スザク!俺の子供を産んでくれ!!!」
たぶんまだ夢を見ているであろう彼からのありえない告白に、スザクは身体を石のように固まらせる。
思考回路だって一度停止して、それからまた急激に回り始める。
ルルーシュはまだ夢の中のはず。一体どんな夢を見ているんだろう。僕の名前が出てきたってことは僕がいるってことだよね。けど楽しい夢なのか辛い夢なのか分からない。
ルルーシュがどんな夢を見ようが勝手なんだろうけど、それでもどうしてもこれは言っておかねばならな気がした。
ねぇ、君は僕と何をしている夢を見ているんだい?
プチ、と自分の中で何かが千切れる音がした。
そう。プチッ、と小さく、理性と言う糸が、だ。
そうしてバチン!と渇いた音が部屋に響くと同時に部屋のロックが開く音。
「いやぁ〜悪い悪い、会長がさ、片付け手伝ってから寝ろ・・・、てスザク?」
電話を終えたリヴァルが悪びれた様子で戻ってこれば妙に静まり返った部屋の空気と、スザクの振り上げたままの腕と、寝ていたはずのルルーシュが目をきょとんとさせて首をこっちに曲げている様だった。
ほんの数分での変わりようにリヴァルは理解不能だ。
またそのルルーシュの方頬がしだいに熱を帯びてきたのか、赤くなっているのも分かった。
「えーっ、と?」
状況把握が難しいとばかりに腕を組んで考え込むとスザクは立ち上がり、
「ルルーシュ、君がそんなやつだとは思ってなかった」
と、冷たい言葉を浴びせて今にも泣き出しそうな顔して部屋を飛び出して行ってしまう。
それを追いかけることも出来ず見送ると、視線をルルーシュへと戻す。
ルルーシュも一体何があったのだといわんばかりに呆けた顔をしている。
「ルルーシュ・・・スザクに何したの、」
「・・・え?」
「そっちの頬、かなり赤いんですけどー?あんたなんか最低!とばかりにぶたれた後のようなー・・・」
目が覚めたと同時に頬が熱くなって、最初に飛び込んできた映像はスザクの顔だったが自分が彼に何かした、という感覚は今のぼんやりとした思考にはなかった。
が。
ルルーシュはふとさっきまでの映像を思い出し始める。
そこの中でも自分はスザクと居て、場所は自分の部屋で、ベッド。二人座って、話をして、何の話をしていたんだ俺たちは。確か、確か…、
「しまったあぁぁ!」
突然ルルーシュは奇声を上げると、ブランケットの中から勢いよく飛び出す。
どうやら自分は夢の中での一世一代の告白を現実でもしてしまったらしい。運悪く、スザク本人がいる前で激しい寝言となって。
「誤解だ、スザク!今のはなしだスザク!!」
珍しく取り乱した声を喚きながら部屋から出て行ってしまったスザクを追いかける。その様子をリヴァルは口をあんぐりと開けた見守ると盛大な溜息を吐いた。
出て行った二人は追いかけ追いかけられながら少々自粛した方がいい会話を露呈させていた。
「待てスザク!誤解だ間違いだ!訂正させろ!」
「訂正も何もそれが君の本音なんだろう!僕に…僕にそんなことできるわけないじゃないか!ひどいよルルーシュ」
「だっから!違うと何度も!」
「僕は男だし、子供がそんな欲しいならシャーリーとかカレンに頼めばいいじゃないか!」
「何拗ねてるんだ!」
「拗ねてない!男じゃ子供は産めない、てことを言っているだけだよ。それに今時そんな告白誰もしないよ、ルルーシュ!」
「んなっ!」
「ごめん、ルルーシュ。君の期待には、応えられないよ…」
衝撃の言葉を受けてルルーシュの顔が蒼白になる。スザクは「ごめん、ルルーシュ」と悲愴に告げて彼を振り返ることなく走り去るのをルルーシュはただ見つめることしか出来なかった…。
そして最後にぽつんとリヴァルが部屋に1人残される。
「・・・まったく、何時だと思ってんのー二人ともー」
朝4時を過ぎてハイテンションなのも分かるけど、追いかけっこを今からやるのはどうかと思うけどな、とまったくをもって他人事で片付けるのだった。
反逆の山々DX箱根旅行をルルスザ+リヴァルにしてみましたなネタ
++DX聴いてめちゃ萌えたのでルルスザしたみましたな日記ネタでした!++
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