(気持ち悪い、て思うだろうか……)

思わず誰かに聞こえてしまうじゃないだろうか、と思うぐらいの溜息を吐いてしまった。

その裏にある言葉は心の内だけで囁かれたが。

スザクはチラリと、斜め前の席に座っているルルーシュの背中を盗み見る。

講義をする教師の声が教室に反響して聞こえる中の小さな煩い。

好き、なんて気持ちきっと気持ち悪く思われる。

だってただの好き、という感情じゃなくてもっと特別の好き。

そんなことを思われても、怪訝な顔をするんだろう。

すぐに「馬鹿かお前」と言っているルルーシュが浮かんで消えた。

そうに違いない。だって僕達は男の子だ。

男の僕に「好き」と告白されたところで、彼はどう答える。


スザクはもう一度、溜息を零した。

そもそも今朝見た夢がいけなかった。

思い出すだけで、どうしよもなく取り乱してしまいそうなほど恥ずかしい夢。


(ああ、僕ってルルーシュのこと好きなのかも)


と、自覚したのか見た夢がそう解釈させたのか。

もうどちらでも良かった。

どちみちこの感情は本物なんだ。

けど、もしも伝えて拒まれたら。

思考はまたそこへとループする。

好きだけど、伝えて拒まれて嫌な顔されてルルーシュにまで避けられてしまったら。


(はは、勝手だよねソレって……)


自分が傷つくのが怖い、なんて自分勝手だ。

しかし本当に、ルルーシュに冷めた顔を向けられるのが怖い。痛い。悲しい。

傷つけられるのも、傷つけるのもいやだ。

だから僕は口を噤む。

実際、夢を見たのは今朝だけじゃない。

毎晩、君を思いながら惨めになる。

こんな僕でも友達と言ってくれる君。本当の本当に?

何を与えられない僕が、君の傍に居てもいいのかな。

夢の中のルルーシュだけは、僕と一緒に穢れてくれる。

僕の浅ましい答えに、答えてくれる。


夢だけなら。


目を細めて、視線を落とす。

止まっていた手を滑らせて、ノートへ黒板の文字を書き写しても頭にはその図式は入ってこなかった。

やっぱり言えない。

それに上手くこの気持ち、言葉にならない。

だって親友という場所は唯一、気持ちを知られなくても傍にいても良い心地良いところだ。


「……」


イコールになる関係、てなんだろう。

僕とルルーシュは、友達という関係はイコールになるんだろうか。


(好きな人と大切な人、てどう違うんだろう、)


きっとそれは、イコールじゃない気がした。






                        ++拍手ネタ++

                            



確かな気持ちに嘘は言えない